デザインのわずかな違いを、どこまで詰めるか。
プロダクトデザインでは、全体のシルエットやコンセプトだけで製品の印象が決まるわけではありません。
エッジにどの程度のRをつけるか。面と面をどのようにつなぐか。曲面をどこから立ち上げ、どこで収束させるか。開口部や部品の境界、金型勾配、リブやボスによるヒケなど、設計・製造条件が外観に与える影響をどのように処理するか。
一つひとつは小さな違いでも、それらが製品全体に積み重なることで、精度感や緊張感、堅牢さ、やわらかさといった印象をプロダクトデザイナーが作り込んでいきます。TFDWでは、こうした細部の造形まで可能な限り検討を重ねています。
その制作環境として使用しているのが、Siemensの3D CAD「Siemens Designcenter(旧NX)」です。
ただし、Siemens Designcenterを使用していること自体がTFDWの強みだとは考えていません。重要なのは、デザイナーが形について考え続けられる環境、妥協を許さず細部に至るまでこだわりを持って作りこめる環境を用意することです。
製品を3Dで設計していると、外から見ればほとんど違いが分からないような調整にプロダクトデザイナーはこだわりを持って長い時間を使うことがあります。
・例えば、あるエッジのRを0.5mmにするか0.55mmにするか。
・サーフェスの張りをわずかに変えるか。
・隣り合う外装部品同士とのつながりをもう少し自然にできないか。
数値だけを見れば、ごく小さな差です。
しかし、一つの製品にはこうしたディテールが数多く存在します。細かなデザイン判断の積み重ねによって、最終的な製品の完成度は少しずつ変わっていきます。
TFDW代表はメーカーのデザイン部門で製品開発に携わる中で、こうした細部まで妥協せずに造形を検討する姿勢を身につけてきました。時にはサーフェスを調整し続けるだけで、一日の大半を使うこともあります。
効率だけを考えれば、どこかで「この製品はこれで十分」と判断して次へ進むこともできます。
それでも、デザイナー自身にもう少し良くできる可能性が見えているのであれば、一度試して確認したい。
これはTFDWにおける、プロダクトデザインに対する基本的な姿勢です。
CADの制約は、デザインの選択肢にも影響する
3D CADは形を入力するための道具ですが、その操作性やモデリング能力は、デザイナーの思考にも深く影響します。
ある形状を変更するために長い作業が必要だったり、モデルを大きく組み直さなければならなかったりすると、追加の検討には当然時間がかかります。
問題は、それが単純な作業時間の増加だけで終わらないことです。
修正の負担が大きい環境では、
「もう一案試してみよう」
「このサーフェスも少し変えて比較してみよう」
「一度かなり形を崩して、別の可能性も確認してみよう」
といった検討が、無意識のうちに少しずつ億劫になります。
そして厄介なのは、その変化をデザイナー本人が自覚しにくいことです。
TFDW代表自身も、従来とは異なるCAD環境でデザインを行った際、制作中は十分に検討しているつもりでも、後から振り返ると細部を詰めるデザイン水準が明らかに下がっていた経験があります。
ツール自体の性能やモデリング能力が、気づかないうちにデザイナーの思考や検討範囲を狭めてしまうことがあります。この経験から、TFDWでは制作環境もデザイン品質を構成する重大な要素の一つとして考えています。
一つの案を速く作るためではなく、多くの可能性を試すため
TFDWにとって3D CADを使ったアイデア展開の速度は、単純な生産性の話だけにとどまりません。重要なのは、同じ時間の中でどれだけ多くの造形を試行錯誤できるかです。
プロダクトデザインでは、最初に思いついた形がそのまま最終案になるとは限りません。
サーフェスの構成を変える。面の張りを変える。エッジの位置を動かす。Rの大きさを変える。全体を見直して、また前の形に戻る。
TFDWでは、こうした試行錯誤を3D上で繰り返しながら形を探していきます。
Siemens Designcenterの強力なサーフェス定義能力やモデル編集の柔軟性は、この検討を止めずに続けるために活用しています。
TFDWでは、自社で構築する3Dモデルは履歴ベースのパラメトリックモデリングで管理し、寸法や構成の変更に安定して追従できるようにしています。開発途中で設計条件が変わった場合にも、クライアントからの要望へ迅速に対応できます。
一方、クライアントから受領する3Dデータには、編集履歴を持たないデータもあります。そうしたデータでも、Siemens Designcenterのシンクロナス機能を使って形状を直接編集できるため、元の履歴に依存せず、比較的高い自由度でデザイン修正を進めることができます。
履歴のあるモデルと履歴のない受領データの双方を扱いながら、設計変更とデザイン検討を止めずに進められることも、TFDWがSiemens Designcenterを制作環境として重視している理由の一つです。
一つの形を早く完成させることよりも、複数の可能性を比較し、その中からより良い形を選ぶ。その検討回数を増やせることの方が、最終的なデザイン品質には大きく影響すると考えています。
自由な造形と、設計変更への追従を両立する
自由曲面を扱うことだけであれば、プロダクトデザインにはさまざまな優れた3Dツールがあります。
TFDWでもRhinocerosを使用しており、自由な造形検討には非常に有効なツールです。
一方、TFDWが多く携わる産業機器や精密機器の開発では、一度形を作れば終わりというケースはほとんどありません。内部部品の変更、外形寸法の変更、開口部の追加、製造方法の変更など、開発が進む中では、設計変更が繰り返し発生します。
その都度デザインも追従しながら、製品としての造形品質を維持していく必要があります。
そのためTFDWでは、自由なサーフェス造形に加えて、パラメトリックにモデルを管理しながら設計変更へ追従できることを重視しています。
「自由に形を作れること」と「開発途中で何度でも変更できること」。
この両方が必要になることが、TFDWがSiemens Designcenterを使用している大きな理由の一つです。設計変更へ迅速に追従し、デザイン作業がその後の開発工程のボトルネックにならないことも重要です。
正確な3Dデータを設計工程へ渡す
TFDWのクライアントが使用しているCAD環境はさまざまです。同じParasolid系のCADを使用しているとは限らず、案件によってデータの受け渡し条件も異なります。
さらに、プロダクトデザインで作成する3Dモデルでは、複雑なサーフェス定義を使用することも少なくありません。データ変換によって形状変化やサーフェスエラーが生じれば、そのまま後工程へ不完全な3Dデータを渡すことになります。
TFDWではこうした問題を避けるため、モデリング能力だけでなく、データ変換時の再現性や受け渡し後の形状品質も制作環境を選ぶ重要な基準にしています。
デザイン画やレンダリングとして形がきれいに見えるだけではなく、設計者が受け取った3Dデータでもデザイナーの意図した通りの形が保たれていること。
それもデザイン会社が納品する品質の一部だと考えています。
制作環境としてSiemens Designcenterを選ぶ理由
国内のデザイン事務所では、SOLIDWORKS、Rhinoceros、Autodesk Aliasなどが広く使われています。一方、Siemens Designcenterは大規模なメーカーや開発部門での導入例が多く、小規模なデザイン事務所での導入はまだ珍しいと認識しています。
TFDWでは、造形検討の自由度、設計変更への追従性、3Dデータの堅牢性を重視し、Siemens Designcenterを制作環境の中核に据えています。CAD側の都合を理由に「この程度でいい」と造形検討を止めず、デザイナーが必要とする試行錯誤を続けられる環境を維持することが導入の目的です。
もちろん、使用するCADがデザインの良し悪しを決めるわけではありません。
形を判断するのはデザイナーであり、その造形力や経験が前提にあります。TFDWでは、その能力をツール側の制約で削らないことも、求める水準のデザイン品質を安定して提供するための品質管理の一つだと考えています。
細部までこだわり抜いた形を、製品へ
TFDWでは、産業機器、精密機器、ロボティクス、医療・ヘルスケア製品などを中心に、プロダクトデザインから外装設計、試作、量産化に向けたフォローまで、製品開発を支援しています。
技術条件の多い製品であっても、条件の中で形をまとめるだけではなく、細部まで検討を重ねながら製品としての完成度を高めていきます。