完成事例の「見た目」だけでは分からない
外部のプロダクトデザイン会社を探すとき、まず確認するのはWebサイトに掲載された完成事例やポートフォリオだと思います。どのような製品を手がけてきたのか、造形の方向性や品質感が自社の製品に合いそうかを見ることは、依頼先を選ぶうえで重要です。
一方で、産業機器や精密機器のプロダクトデザインでは、各社が公開している事例を見ても、そのデザイン会社の実務対応力までは分からないことがあります。

開発の途中では、内部機構の変更、外形寸法の変更、製造条件の追加、操作性やメンテナンス性の見直しなど、さまざまな条件が入ってきます。最初に提案した形が魅力的であることと、そうした条件を受けながら最終製品までデザイン品質を維持できることは、必ずしも同じではありません。
TFDWがデザイン会社の実力を見るときに重視するのは、完成した形だけではなく、その過程でどんな課題に直面し、どう解決したかです。

そのデザインで、何が難しかったのかを聞く
ポートフォリオに掲載された製品が魅力的に見えても、その形に至るまでの難しさは写真やCGだけでは分かりません。
例えば、どのような設計条件があったのか。途中でどのような変更が発生したのか。デザインと内部機構が競合したときにどう整理したのか。量産条件を盛り込む中で、どの部分を守り、どこを変更したのか。

公開できる範囲でそこまで聞けば、単に形を作る力だけでなく、課題を整理し、代案を考え、製品として成立させる力まである程度分かります。
完成形の説明だけでなく、なぜその判断をしたのか、別の可能性をどのように検討したのかまで説明できるか。TFDWでは、そうしたプロセスにデザイン解決力が表れると考えています。

「同じ製品ジャンルの実績」があるかだけで判断しない
依頼したい製品と同じジャンルの実績があることは、発注側にとって分かりやすい安心材料です。医療機器、ロボット、計測機器、家電など、それぞれの分野には固有の使用環境や規制、開発上の慣習があります。
ただしTFDWでは、デザイナーの専門性を製品ジャンルだけで判断する必要はないと考えています。
複雑な内部機構や設計変更、量産上の制約を受けながら製品をまとめてきた経験は、製品ジャンルが変わっても応用できます。新しい分野では法規制や業界固有のルールを学ぶ必要がありますが、複数の条件を整理しながら形を成立させる力そのものは、特定の製品だけに限定されるものではありません。

また、幅広い製品を経験していることが、別分野で使われている構造や考え方を代案として提示する引き出しにつながることもあります。同じ種類の製品だけを長く扱うことで、「この製品ではこうするものだ」という固定観念が生まれる可能性もあります。

もちろん、経験の幅が広ければ何でも同じように得意、という話ではありません。商品企画やコンセプト開発を得意とするデザイナーと、複雑な技術条件を受けながら製品の細部まで徹底して造形を詰めるデザイナーでは、強みの種類が異なります。
「同じ製品をデザインしたことがあるか」だけではなく、「今回の開発で必要になる種類のデザイン経験を持っているか」を見ることが重要です。

NDAで見えない実績を、どう考えるか
BtoB製品、とくに大手メーカーの開発案件では、契約やNDAによって実績を公開できないケースがあります。TFDWでも、実際に携わっているすべての案件をWebサイトへ掲載できるわけではありません。
そのため、公開されている案件数や製品ジャンルだけで、その会社が経験してきた仕事の全体像を判断することは難しい場合があります。

もちろん、公開できない案件の企業名や製品情報を無理に確認する必要はありません。代わりに、どのような開発条件の案件を経験してきたのか、何が難しかったのか、設計変更にどう対応したのか、どこまで量産段階に関わったのかなどを、話せる範囲で聞いてみる方法があります。
実際に案件について少し踏み込んだ会話をすると、その場で返ってくる質問や回答から、製品開発への理解度や経験の深さが見えることもあります。ポートフォリオは重要な入口ですが、NDAの多いBtoB分野では、デザイナーとの会話も依頼先を判断するための材料になります。

初期の提案だけではなく、条件が増えた後のデザイン対応を見る
プロダクトデザインの初期提案では、まだ量産条件や細かな設計条件が十分に反映されていないことがあります。その段階では非常に魅力的に見えたデザインでも、製品化へ進むにつれて形を調整する必要が出てきます。
抜き勾配、パーティング、肉厚、固定方法、開口、クリアランス、組立、メンテナンス、コスト。こうした条件を一つずつ盛り込むたびに、最初のデザイン意図をそのまま維持できるとは限りません。

デザイナーの力量に差が出るのは、むしろここからです。条件に合わせて単純に形を崩すのではなく、必要な変更を受けながら別の造形解を探し、製品としてのデザイン品質を維持していく。
産業機器のように設計変更が多い製品では、この調整力が不足すると、デザインと内部機構の競合が長引いたり、後工程で大きな手戻りが生じたりする可能性があります。依頼先を検討するときは、初期提案の見栄えだけでなく、条件が変わった後にどのようにデザインを成立させてきたかも確認したいポイントです。

見積金額を比べる前に、スコープを確認する
プロダクトデザインの見積金額は、会社によって大きく異なることがあります。ただし、その差をそのまま「高い会社」「安い会社」と捉える前に、見積に含まれている業務範囲を確認する必要があります。
同じ「プロダクトデザイン」という表記でも、コンセプト提案までなのか、3Dデータの作成まで含むのか、開発途中の設計変更へどこまで対応するのか、試作確認や量産フォローまで含むのかによって、必要な工数は大きく変わります。

量産フォローを完全に別見積とする場合もあれば、一定範囲までは当初の見積内で対応する場合もあります。TFDWでも、製品の開発状況や依頼範囲によって見積のスコープを設定しており、どこまで含めるかによって金額は大きく変わります。
複数社の見積を比較する場合は、総額だけでなく、何を成果物として納品するのか、設計変更への対応はどこまで含むのか、試作・量産段階の対応は別見積になるのかなど、スコープも比較しながら確認することが重要です。

見積条件の境界を確認する
デザイン業務では「同一見積で修正は何回まで対応するか」が確認事項になることがあります。ただ、複雑な要素が絡まり合う産業機器の開発では、修正の回数だけで業務量を整理しにくいケースもあります。
一つのRを調整する修正と、内部機構の変更によって外形寸法や操作部の位置から見直す修正では、同じ「修正」でも内容と工数が大きく異なります。TFDWでは、修正回数を一律に定義するのではなく、開発条件の変化に合わせて対応しています。

とくに、依頼時点で内部機構やメカ要件が十分に固まっていない場合は、外形寸法の大幅な変更、主要部品のレイアウト変更、要求仕様や製造方法の変更などが発生したとき、どこまでが当初スコープで、どこからが追加見積になるのかを事前に確認しておくと、後から認識の差が生じにくくなります。
発注側とデザイン会社の双方にとって重要なのは、変更を避けることではなく、変更が起きたときの扱いをあらかじめ共有しておくことです。

発注先を選ぶときは、完成形の奥を見る
プロダクトデザイン会社を選ぶとき、完成事例、同じ製品ジャンルの実績、見積金額はいずれも重要な判断材料です。ただ、それだけでは分からない部分もあります。
そのデザイナーがどのような課題を解いてきたのか。条件が変わったときにどのような代案を出せるのか。初期案から量産段階までデザイン品質をどう維持してきたのか。見積のスコープをどこまで明確に説明できるのか。

TFDWでは、こうした完成形の奥にある経験や対応力まで含めて、デザイン会社の実力を見ることが重要だと考えています。
Webサイトやポートフォリオだけで、デザイン会社の実力をすべて判断するのは難しいと思います。候補が絞れたら、自社の開発状況やまだ固まっていない条件まで少し具体的に話してみる。そのときに返ってくる質問や提案から、その会社が自社の開発に合うかはかなり見えてきます。

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